一般社団法人国立大学病院長会議は、2022年(令和4年)度 第2回記者会見を10月12日16時より開催いたしました。記者会見では、9月28日に開催された第3回国立大学病院長会議常置委員会で検討した内容を中心に、医師の働き方改革への取り組み、次の感染症に備えた感染症法の改正、光熱水費高騰への対応、 新型コロナウイルス感染症への対応状況などについて説明しました。その内容についてプレスリリースとしてご報告いたします。
国立大学病院長会議 令和4年度第2回記者会見
日時:令和4年10月12日(水) 16時00分
会場:秋葉原UDX4階 ギャラリーネクスト
〇発表:
1 新型コロナウイルス感染症への対応について
2 光熱水費高騰への対応について
3 次の感染症危機に備えた感染症法への対応について
4 医師の働き方改革への対応について
〇質疑応答
【配付資料】
会見資料
【発表者】
一般社団法人国立大学病院長会議 会長
千葉大学医学部附属病院 病院長 横手 幸太郎(よこて こうたろう)
筑波大学附属病院 病院長 原 晃(はら あきら)
【発表者(オンライン)】
一般社団法人国立大学病院長会議 副会長
大阪大学医学部附属病院 病院長 竹原 徹郎(たけはら てつお)
山形大学医学部附属病院 病院長 佐藤 慎哉(さとう しんや)
群馬大学医学部附属病院 病院長 齋藤 繁(さいとう しげる)
三重大学医学部附属病院 病院長 池田 智明(いけだ ともあき)
岡山大学病院 病院長 前田 嘉信(まえだ よしのぶ)
【記者会見の要旨】
1 新型コロナウイルス感染症への対応状況について
令和2年4月以降、国立大学病院では重症例を中心に新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる一方で、重症手術、移植等といった高度な医療の提供との両立を行ってきました。また令和4年8月がピークとなった第7波に伴い、国立大学病院でも新型コロナウイルス感染症患者の受け入れが急増し、6月1日~7月5日の期間421人だった受け入れ数が8月3日~9月6日には2,972人と急増しました。さらに第7波では感染患者の受け入れだけでなく、職員の陽性者や濃厚接触者が大幅に増え、人員確保に大変苦慮しました。
そのような中でも急増した感染患者の受け入れに対応、また一部診療制限を行いながらも、通常手術の実施等、大学病院に求められる高度な医療提供を維持してきました。現在、第7波も収束しており、厚生労働省からは令和4年10月以降のコロナ病床確保に向けた補助(病床確保料)について、コロナ即応病床の使用率が一定水準に満たない場合、病床確保料の調整(減額)となることが発表されました。今冬に懸念される季節性インフルエンザの流行や第8波の到来などが懸念される中、医療提供体制を守ることは重要であり、引き続きの支援をお願いしたいと考えております。
2 光熱水費高騰への対応状況について
令和4年度の光熱水費について国立大学病院全体で前年度70.1億円以上の負担増と試算、病院経営に深刻な影響を与えていますが、医療機関ではこのような費用を患者へ請求する、といった価格転嫁をすることができません。こうした状況への対策として、6月には「令和4年度における新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の取扱い及びコロナ禍における原油価格・物価高騰等総合緊急対策」が設けられ、9月には総額6,0
00億円の重点交付金の交付が閣議決定、また10月3日の衆議院本会議では「家計・企業の電力料金負担の増加を直接的に緩和する、前例のない、思い切った対策を講じる」との総理所信表明演説がなされたところでもあります。全国の国立大学病院では、6月の「令和4年度における新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の取扱い及びコロナ禍における原油価格・物価高騰等総合緊急対策」通知以降、光熱水費高騰への支援について都道府県へ相談を行っており、8月末時点での状況調査では2大学しか支援を受けることができない見込みでしたが、その後の各大学病院からの働きかけ、また関係省庁の取り組みもあり、10月12日時点では9大学が支援を受けられる見込みとなりました。しかし一方で、支援の内容として医療機関一律の単価に病床数を掛けた額がほとんどであり、高機能な機器・設備を多数稼動させているために、高騰の影響をより一層受けている大学病院への支援としては不足している状況となっています。また現時点18大学病院については、支援を受けられない見込みであり、都道府県によって大きな差が生じている状況です。このような支援の受けられない大学病院への迅速な支援の決定、また高機能な機器・設備を多数稼動させている大学病院に対する効果的な支援を、国立大学病院長会議として引き続きお願いしてまいります。
3 次の感染症に備えた感染症法の改正について
新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の具体策として、次の感染症危機に備えた感染症法等の改正における特に国立大学病院に関するものとして「都道府県と医療機関の協定締結」、「特定機能病院に感染症対応の義務付け」、「流行初期医療確保措置による減収補填」、「広域での医療人材派遣の仕組み」が検討されています。次の感染症危機に備えた感染症法の改正を検討していく中で、国立大学病院としてしっかりと対応していくために、「重症患者を中心とした特定機能病院としての役割を明確にしていただくこと」、「物的・人的な急な体制強化は難しく、平時のうちから有事に備えておくための診療報酬等での支援」、「感染症初期の減収補填について一律とせずに柔軟な対応」、「都道府県を越えた派遣の際には既存の体制にも配慮いただくこと」をお願いしてまいります。また具体的策の検討を進めるにあたり、大学病院との対話を積極的に行っていただきたいと考えております。
4 医師の働き方改革への取り組み状況について
医師の時間外労働の実態について、全国の国立大学病院では様々な調査を行ってまいりました。その結果、自院での勤務実績(時間外・休日労働時間を含む)については全ての国立大学病院で把握できており、兼業先の勤務については、39国立大学病院で自己申告ベースも含め「実績」まで把握できており、残りの3大学病院についても兼業先の勤務「予定」は把握できており、実績把握についても早急に対応を進めています。
時間外・休日労働時間1860時間を超える医師484人(全体の約2。2%)について
は、令和6年4月までに時間外・休日の労働時間を1860時間以内に縮減する必要があります。一方で、地域の診療体制維持のためにも兼業先の医療機関においては宿日直許可の取得等、引き続きの協力をお願いしていきます。また、960時間超の医師についても連続勤務時間制限・勤務間インターバル規制等の追加的健康確保措置を講じることが義務化、また、
2035年度に向けて(長期的な期間)はB水準、連携B水準については廃止される予定であり、将来的には多くの医師で時間外・休日の労働時間を960時間以内とするための努力が求められています。
これを実現させるためには、働き方改革の推進だけでは非常に難しく、働き方改革・地域医療構想・医師の偏在対策の三位一体での改革推進に向けたご支援、ご協力をお願いしたいと考えています。